子どもが2階の窓枠にまたがっていた話。あと数秒遅かったら。

金曜日の夕方、園から帰りに揚げたての唐揚げを買ってきた。
お風呂の準備をしながら、ふと気づいた。静かだな…と。

部屋を覗くと、子どもが2階の窓枠にまたがっていた。

血相を変えて走っていくと、子どもはキョトンとしていた。
理由を聞いたら「ちょっと屋根に降りてみようと思って」と、むしろワクワクした様子だった。

あと数秒覗くのが遅れていたら、呑気に唐揚げなんて食べられなかった。
顔面蒼白で救急車に同乗して大号泣していたはずだ。


大阪にいた頃はマンション住まいだった。

ベランダには耐震スリットが入っていて、避難はしごのハッチも床面にあった。
子どもを一人では置いておきづらい場所だった。
網戸にはロックがかかる仕様で、玄関はオートロック。
比較的新しいマンションで、安全面や防犯面はよく考えられていた。

でも、息苦しさもあった。

上層階に住めば騒音からは遠ざかるが、落下した時が怖い。
私は高所恐怖症でも、子どもは平気なようだったけれど。
低層階に住めば落下の心配は減るが、騒音や防犯面が気になる。
住居というのは、妥協ではなく折り合いや工夫が必要だなだと思う。
何事もそうかもしれないが、何かを選びとれば、何かを失うのだ。


島根に越してきてから、親戚宅の離れに住まわせてもらっている。
土地勘がまったくなかったから、まずはここからと決めた。

二階建ての一軒家だ。赤ちゃん期を経て、すっかり走り回ることが楽しくなってきた子どもには、十分なスペースがある。
マンションでは難しかったことが、ここでは普通にできる。
本当にありがたかった。

ただ、越してきてからは日常生活を整えるのに精一杯だった。
新しい職場、新しい環境、新しい土地。
窓のことまで頭が回らなかった。

しかも二重窓だった。マンションとは構造が違う。
まさか子どもが開けられるとは思いもしなかった。

完全に油断していた。


子どものおもちゃを置いている部屋は、ちょうど子どもの胸の高さあたりに窓枠の下辺がある。

勝手に開かないように対策しなきゃ、と思っていた。
でも、行動する前に、子どもが動いた。

窓枠にまたがっていた我が子を引き入れながら、頭の中で最悪の事態を想像して、震え上がっていた。
2階から落ちると、屋根瓦を経て庭に落ちる。
私は奇声をあげながら、子どもを部屋に引き入れた。

キョトンとした顔で「ちょっと屋根に降りてみようと思って」と言った我が子。
高所恐怖症の私には到底できないことを、この子はワクワクしながらやろうとしていた。

赤ちゃんの頃から体の動きは活発で、歩けるようになってからはいろんな遊具に果敢にチャレンジしていた。
気がつくと高さのある公園の遊具も、ひょいひょい登って行けるようになり、一番上でピースする始末だ。
保育園の先生方の導きのおかげだと思っているけれど、一体誰に似たんだろうと不思議でならない。


その日から対策をした。

まず子どもを庭に連れて行き、部屋の窓を見上げた。
ジャンプしても、肩車しても届かないほど高い。

そこから落ちたらどうなるか、言葉を選びながら伝えた。
痛い思いをすること。もう遊べなくなるかもしれないこと。
お空に行くことになるかもしれないこと。
もし、そうなったらママはとってもとっても悲しいよ、と。

親戚の大事な家の屋根が壊れてしまうかもしれない、ということも話した。
みんなが悲しむ、と。

最後にこう伝えた。
「空気や風は窓から出入りするけど、あなたはドアからだよ。窓は使わないんだよ。」

ハード面では、サッシを開けられないようにするロックを取り付けた。

子育ては、環境が変わるたびに最適化が必要なんだなだと思った。
マンションで気をつけていたことだけでは、引越し先では足りないこともある。
安全だと思っていた場所が、次の瞬間そうじゃなくなる。

それが子育ての大変さや深さだなだと、改めて思った。


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